Condorのタスク・サーバに入ってレースに参加する時は、やはりスタートが一番肝心である。ここで失敗すると結構苦しくなってそのまま不時着してしまうパイロットも多い。では、どうすると良いスタートが切れるか。。。まずはあまり地形条件を考慮しないですむサーマルタスクで考えてみよう。
(ポイント)
①自分は今日はどういうスタートをするのか、スタート前に高度を稼ぎながら作戦を考え、②スタートラインは最大高度少し下で通過し、その後、巡航速度まで丁寧に機首上げして高度を稼ぎ、③最短距離で最初の積雲に向かって、がっちりサーマルに入り充分に上がる。
通常スタート高度は1,000m〜1,200m。今回のKanto Gliding Cup 2021では全タスクで1,200mに設定。スタート前に気象を確認してもらえれば分かるが、雲底高度はだいたい1,400m〜1,700m。スタート後にまずは雲底まで上げることが出来るとその後の余裕が出来て落ち着いて飛ぶことが出来る。しかし、最初のサーマルで失敗するとどんどん余裕がなくなり、その後は余計な高度低下を避けるために巡航速度もぐっと下げなくてはならない。そうするといきなりタスクスピードが落ちてしまうし、高度が低いとサーマルの強さも弱いので高度回復に余計に時間がかかってしまってさらにタスクスピードが遅くなるという、いきなり大きなハンデをしょってしまうので辛い。
そのため、どうやって良いスタートを切るかをフライトが始まったときから考えていなくてはならない。
(地上待機、曳航中)
CondorでR/Wに入ったとき、既にポイント①は始まっている。R/Wでは摩擦や土手などの影響で上空とは風向風速が異なっていることが多いので必ずR/Wに入ってくる前にタスク画面で風向風速を確認しておく。まずはぐるりと見渡して、積雲の様子を確認、曳航中も積雲の様子やスタートラインがどこにあるのか、他機はどこで上がっているのかを確認。あまり時間はないがぼやっとせず、周りをよく見て、どの積雲で上昇を始めるかイメージ作り。他機の上がり具合も要注意。がんがん上がっているのか、ぼちぼち消えかけているのか、そこまで考えること。離脱後は曳航機の旋回方向を確認後、直ちに積雲に向かい高度獲得を始める。離脱高度に近づいてきたときに、運良く積雲の下を曳航し、さらに強いプラスを感じたらそのまま離脱して上昇を開始しても良い。
(スタート前、サーマル上昇中)
サーマル上昇中も、PDAのマップを見てスタートラインの後ろ側に移動するにはどの積雲を使うとよいか常に考える。最初のサーマルで上昇したまままっすぐスタートに向えることもあるが、逆に積雲がどれもスタートラインから遠すぎてどうしても指定の最高高度でスタートラインを越えることが出来ないこともある。また、その日の気象条件を理解するには、出来ればいくつかのサーマルを試してみる方が良い。サーマルの強さはどのくらいか、粒はそろっているか、雲底まで上がってみて縦方向のサーマルの強さの分布はどうかなど、情報はあればあるほど良い。そして、得られた情報を使ってスタート時のMC値を設定し入力する。理論的にMC値は次にはいるサーマルの平均上昇率であるが、これを適切に設定出来るかどうかが結構タスクスピードに反映する。そのために、上級者はスタート前にいくつかのサーマルに入ってみたり、下から上まで上がってみて具合を見るのである。慣れてない人、Airborneで始まっていきなりスタートする場合などサーマルの強さの想定が難しい場合は私はMC値を1.5にすることをお薦めしたい。まぁ無難な数値と言えるであろう。
さあ、充分な高度まで上がったら、次はどういうラインでスタートを切るか再度確認を行う。TP1の方向に飛んでいくのに出来るだけ多くの積雲の下を飛びたい。一方、一番近くの強そうな積雲にいち早くたどり着いて早速雲底まで上がりたい。どこのラインがいいだろうか。サーマル上昇中もそんなことを常に考えながら飛んで欲しい。
スタートラインは通常長さ6km、長いときは10kmもあることがある。充分な幅があるのでスタート後にどう飛ぶかは良〜く考える。理論的にはタスクラインの風上側にずれたところからスタートするほうが飛行経路が短くなる。サーマル中にドリフトするのでどんどん風下側に流されることを考慮すると、あらかじめ風上側から飛びはじめるほうがロスは少ない。
これはDay1タスクをもう一度ASW-20で飛んだときのもの。先行するASW-19は積雲がいくつか重なって発生しているところにスタートラインの左端の方からスタートしているが、右側の積雲がもっと近そうなので、スタートラインの右の方からそれを狙ってみることにした。 |
(スタート)
さて、スタート地点が決まれば、ラインに直角にポイント②に書いてあるスタートをするわけだが、スタート高度の少し下でVne速度で横切るのが理想。Club機の場合、まずは200km/hとするのが無難。(ただしVneというのはあくまでCondorの中だけ。非常に危険なフライトになってしまうので、実機では170km/hくらいで制限がつけられるようだ。2022.2.20追記)
スタート高度の200m上くらいからビューンと速度をつけ、Club機で200km/hくらいまでスピードを出して、スタート高度20mくらい下のところを水平飛行、最初はダイブを使って高度処理しても良いが200km/hの速度を維持しながらスタートラインに持っていく。その後CondorのTask Startの合図でゆっくり機首上げして高度を稼ぐ。オーディオバリオはクルーズモードに切り換え、設定したMC速度でまっすぐ最初の積雲に向う。
この動画はDay1タスクをASW-20でもう一度飛んだときのもの。フラップは使わないでスタートしている。スタート場所、最初の積雲を決めたあと、1,400mからスタートラインに直角に200km/hくらいまでスピードつけて高度処理。PDAのスタートエリアが赤から緑に変わったらスタート高度まで下がったということなので、そのまま高度を維持。スタートラインを越えたら丁寧に機首上げをして速度をMC速度まで落とす。今回はMCセットとバリオをクルーズモードに切り換えることを忘れていたのでスタート後慌てて行っているのがちょっと恥ずかしい。プランBの無いスタートだったが、スタートからほとんど高度を落とすことなく最初のサーマルに入り高度を稼ぐことができた。(最初のサーマルで高度を稼ぐ)
さぁ、ポイント③でまっすぐ積雲に向うのであるが、最初のこの積雲がくせ者。いきなりスカでプラスに当たらないこともあるので常にプランBは考えておくこと。安全策をとって前後に二つ積雲が並んでいるところを最初のサーマリング目標とすることもあるが、外れた場合に一瞬で次の積雲に向うか、それとも後戻りしてちょっと横にずらしてもう一度同じ積雲の下を探ってみるかを決めなくてはいけない。ここでチャレンジが外れてしまうと結構苦しい。
そういう意味では先行機が回っている積雲に向うのは安全策であるが、技量が伴わない時は結構危ない。そういうサーマルは後ろからもどんどん突っ込んでくるので多くの機体がガグルを組むことがある。スタート前に作戦は充分に考えよう。
私がCondorで飛んでいてどなたかに教えてもらったのは、巡航は雲底高度の半分まで。回り道は出来るだけ避けてタスクライン上をまっすぐ飛んで、半分の高度に近づくまで伸ばしていいが、半分まで行ってしまったらかなり危険ラインでその後は最適L/Dで最も近いサーマルに向わなくてはいけない。雲底が1,500mであれば、危険ラインは750m。スタート高度が1,200mだとあまり余裕はない。だから、最初のサーマルを早く、確実に見つけて、充分な高度に上がる必要があるのである。
スタートに関してはそんなに焦る必要はない。今回のレースではゲートは60分間開いてるのでじっくり考えて出発しても良い。後ろから出発してさらにおいてきぼりになるのは寂しいという方は、サーバ開始後直ぐに入ってフライトを始めて欲しい。
上級者はR/Wに入った瞬間から、フル回転で頭と五感(残念ながらCondorでは尻バリオがないのでオーディオと僅かな機体の傾きを目で見るしかないが)を使っている。PDA画面は結構くるくる動かして他の機体の旋回位置やスタートラインがどこにあるのかを見ているし、他機の上がり具合は一生懸命見ている。私はしばしばズームイン・アウトも使って雲の様子や他機の様子を見ている。リアルではこんな機能はないが、望遠鏡で遠くを拡大して見ている感じである。レースのスタートはタスクスピードを上げるのにかなり重要なポイントであるので、しっかりと考えて飛んで欲しいと思う。
なお、一つだけ気をつけて欲しいのだが、スタート直後に出来るだけ高度が稼げるようにとスピード出しすぎてVneを越えてしまったり、思いの外スタートラインが近くなってきて急激なダイブをしてしまうと、Vneを越えてしまってフラッターを起こし空中分解してしまうことがある。実は私もこうした失敗は結構あって、自身がこれまで経験した空中接触よりもこれでスタート前にあえなく撃沈というほうがずっと多い。今回のレースもそうであるが、普通のオンラインレースでは空中接触による墜落にはミラクルQキーで回復させてもらえるが、自爆しての墜落は復活させてもらえない。なのでスタートライン直前に高度処理する際には必ずダイブブレーキに手を添えておいて欲しい。Club機はそうとう突っ込んでも速度が上がらないが、高性能機はあっという間にVne越で墜落してしまう。この事態は自業自得とはいえ、自分がそうなってしまうと何とも言えず悲しく落ち込んでしまう。今大会ではそんな犠牲者が一人も出ないことを願う。(NT3)
0 件のコメント:
コメントを投稿