7月のJP Saturday Flightはこれまでと違ってAATというタスク形式のレースを行います。
AATまたはAAT/S、Speed Assigned Area Taskといって、大ざっぱに言うとフライト時間を一定にして、パイロットが自由にTPを決められるタスク。速い人は遠くまで飛んで平均速度を上げ、遅い人は短く飛んで、タスクラインを全選手がだいたい同じころに飛んでいく協議方式です。この方法だと、遅い人でもおいてきぼり感を感じることが少なく、一方で上級者は地形と気象条件で都度都度判断を要求されながら自分で仮想TPを考えなくてはいけなくて、幅広いレベルの人が同時に楽しめるレース形式となっています。
それでは、もう少し詳しく説明していきましょう。
1.タスク例:7月3日のタスクは右のようになっています。
スタートライン:幅6km、海抜1,500m以下
第一レグ:62km、第二レグ:76km、第三レグ:41km、合計178.6km
TP1は半径30kmの円、TP2は半径20kmの円になっていますので、一番短いコースをとると87.65km、一番長いコースをとると273.02kmのフライトをすることができます。
今回のタスクでは最低飛行時間を1時間30分としています。
AATでは最短時間を競うのではなく、平均速度を競います。そのため同じ時間で飛んでくるならできるだけ遠くまで飛んできたほうが平均速度が高くなり、高い得点を取ることができます。パイロットはそれぞれがこの大きな円の中で自由にTPを設定することができ、距離の計算はOLCのようにPCで一番遠くまで行った地点をGPSデータから検出して自動的に距離計算をして速度を求めるようになっています。
さて、では既定の時間より早くゴールしてきた人、たとえば最短距離を使って1時間ちょうどで帰ってきた人はどうなるか。最短距離は87.65km、それを1時間で飛んできたのですが、計算に使う飛行時間は最低飛行時間の1時間30分となります。そのため、平均速度は
87.7km÷1.5h=58.5km/hとなります。
一方、タスク通り178.6kmをちょうど1時間30分で飛んできた人は
178.6km÷1.5h=119.1km/h
なお、最低飛行時間以上に飛んだらどうなるかというのは、サーマル条件や地形などさまざまな要因があるので難しいのですが、単純な平地でサーマル強度や出現する確率が全く同じ状況であれば、最低飛行時間以上に飛んだ場合はスタート時点での高度を十分に生かすことができず、長く飛べば飛ぶほど平均速度が低くなります。
そこで、フライトの理想は、自分の持てる最大限の技量を使って遠くまで飛び最低飛行時間をちょっと過ぎる時間でゴールすることということになります。
2.AATの飛び方
AATを攻める場合、大事なのは飛行途中にタスクを何分飛んだかわかるようにしておくということです。残念ながらCondorのPDAではタスクスタートからのストップウォッチ機能がついていないので、XCSoarなどの外付けのフライトンピューターを使うか、フライト中にTabキーを押してRealtime Scoringで自分のタスクタイムを確認してください。いつもは私の設定するタスクではRealtime ScoringはOffにしてありますが、今月はOnにしてあります。
この時間を見ながら各レグでどのくらいの時間をかけながら進んでいくのか、AATではフライト前に考えておく必要があります。普通の三角の場合は最初のエリアではできるだけ深く距離を稼いで、最後のエリアで最終調整をしながらファイナルグライドに入ります。つまり、時間に余裕があれば距離を伸ばし、時間が足りないと思えば手前の方でファイナルグライドに入るということです。
さて、このファイナルグライドに入るタイミングを計るのが結構難しくて、通常ファイナルグライドはかなりのスピードになるので、旋回中にPDAを見てゴールまで後何分かかるかを確認していても、いざFGに入ったときにもう一度PDAを見ると予想よりもかなり短い時間でゴールすることがわかったりします。そうした場合はタイミングにもよりますが、もう後戻りは聞きません。時間と高度のロスに耐えられるだけのものがあればもう一度きびすを返して攻め直すことができますが、その判断は難しいところです。
3.フライトの実例
右の軌跡は私が練習用に作ったタスクで、シーナリーはLiban、距離は182.1km (min: 110.4km, max: 256.6km)、最低飛行時間1時間30分、TP1/TP2のエリアはそれぞれ20kmとなっています。風はそれほど強くないですが西風なのでリッジが使えそうといったところです。
私は今回は第一レグでは少し奥間で入ってから、リッジを使って第二レグを進み、TP2エリアをわずかにかすめて距離を稼ぎました。
衛星写真では分かりにくいのですが、第二レグのタスクライン上にもリッジがあるので最初はそちらを進もうと思ったのですが、雲底が低くゴールに戻るのが難しそうだったのでそちらを通って奥に行くのをあきらめました。
一度この画像をクリックして拡大してみて欲しいのですが、最終的な距離計算は赤の点線の三角の距離が自動計算されてスピードが出されます。結果は1:37:41、距離181.24km、スピードは111.32km/hとなりました。
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AATではAssigned Area半径は数10kmの設定となり、結構現場に行ってから積雲のラインやサーマルの強さなどの状況を見ながら判断することになりますが、やはり事前の地形の確認と気象状況を予想した上での作戦を考えておく必要があります。
この解説記事を書くのがかなり遅くなってしまいましたが、今日のタスクに参加するときの参考になれば幸いです。ご質問などありましたらこの記事へのコメントやTwitterでどうぞ。
(参考)
Youtube:以下英語版ですがYoutubeのキャプション、自動翻訳を使うと結構わかると思います。
AAT Tactics - Gliding 4分ほどの解説。ルールを簡潔に説明しています。
AAT Tasks: Mater Them To Improve Your Contest Flying! いつものPure Glideのページ。さまざまな状況にどう対処するかが解説されています。
XCSoarマニュアル AATを攻めるときはできればXCSoarなどのフライトコンピューターがあると便利です。Oculusでも多くの方が工夫して使っているようです。
XCSoar v6.4 マニュアル 日本語訳 38ページ「AATタスク, Manual Arm」
XCSoar v7.7 マニュアル 英語版 63ページ「Assigned Area Tasks」
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